1-1『異世界へ〜勇者と遭遇』
自衛「…………」
同僚「おい、おい起きろよ!」
自衛「ぬぉ、なんだ……あ?何で俺、装甲戦闘車の中で眠ってんだ?」
同僚「そんなことどうでもいい!早く外に出て見ろ!」
自衛「どうした一体……あぁ、景色が違う?」
自衛「丘の天辺?……演習場から移動したのか?」
同僚「こっちも最初はそう思ったよ、でも見てみろ。」
自衛「……車両も、荷物も……テントやコンテナもそのまま……」
同僚「気付いたか?」
自衛「なんだこりゃ?何かおかしくねぇか、どういう事だ?」
同僚「知るか……私も他の奴らも、さっき気がついたばかりなんだ……」
自衛「一曹は?」
同僚「指揮車で無線連絡を試みてる」
隊員A「マルヒト、マルヒト、こちらヒトヒト、ヒトヒト送れ!……駄目です」
一曹「他で試せ。ったく、どうなってるんだ?」
自衛「一曹」
一曹「自衛、気がついたか。」
自衛「一体何がどうなってんですか?」
一曹「それはこっちが聞きたいくらいだ、いつのまにか倒れてて、気がついたらこの状況だ。」
自衛「無線は?」
一曹「片端から試しちゃいるんだが……」
隊員A「マルハチ、マルハチ、こちらヒトヒト……どこも応答しません……」
一曹「駄目か、畜生」
自衛「……そういや他の部隊は?隣の区域に第五中隊がいたはずだろ?」
同僚「姿形もないよ、私達のいた場所だけが切り取られたように存在して、後は辺り一面草原の海だ。」
自衛「なんだこりゃ、神隠しにでもあったか?」
一曹「自衛、あんまり変なことを言わないでくれ、皆、不安になってるんだ。」
自衛「ああ、すんません」
一曹「一分隊と二分隊をジープで偵察に出した、それを待とう……」
自衛「よぉ、こいつぁもしかすると」
同僚「私もたぶん同じこと考えてるが……まさか……」
自衛「そうとしか考えられねぇが」
隊員A「一分隊が帰ってきました!」
自衛・同僚「!」
ブロロ……
一曹「どうだった!?」
隊員B「けっこう先まで飛ばしたんですか、演習場の形跡はおろか、家も道路もありませんでした……ただ一つ収穫が」
一曹「何だ?」
隊員B「あれを」
ブロロロロ…
自衛「トラックだ」
補給「いやあ、よかった!我々だけかと不安になりましたよ」
一曹「あなたは?」
補給「失礼、補給中隊の二曹です、」
一曹「普通科の一曹です。そちらはトラック一台だけか?」
補給「いえ、岡の向こうの補給陣地にトラックが数両と自走迫撃砲が、我々は陣地ごと"飛ばされてきた"ようで……」
一曹「我々と同じか……」
補給「一体何が何やら……」
一曹「現在、自分の部隊から偵察を出してます、それを待つしか……」
隊員A「一曹、二分隊が戻ってきました!」
ブォォ!キィィ!
自衛「えらい慌てて飛び込んできたな」
一曹「どうした?何か見つけたか?」
偵察「集落です!森の向こう、4kmほど先に集落らしきものが!」
一曹「何だと?」
同僚「そんなバカな!周辺10km四方は完全に演習場内だぞ?」
偵察「ああ、集落なんて存在するわけが無い…でも、あるんだ」
自衛「………」
同僚「………」
隊員A「一曹、どうします…?」
一曹「その集落を調べたほうがよさそうだ…偵察部隊を再編成し、その集落を調査する」
ブォォォォォォ…
自衛隊は調査に五名を選抜
旧73式小型トラックにて、集落へ接近中
同僚「………」
隊員B「士長…武器、必要になると思いますか?」
自衛「変なこと聞くな…」
隊員B「すんません…」
衛生「………」
同僚「見えてきた」
自衛「…何か、妙な雰囲気の集落だな」
偵察「よしてくれ!気味が悪い!」
自衛「いや、霊的な云々じゃなくてよ、なんかこう…現実離れしてるっていうか?」
偵察「なんだそりゃ…?」
自衛「あ、隊員B、入り口の前で一度止めろ」
ブォォ…キィ…
自衛「同僚、衛生と俺は降りて警戒する、偵察、MINIMIにつけ。」
偵察「了解」
自衛「よし行くぞ。」
?「………スゥ」
自衛「………」
同僚「…人の気配が感じられない…」
偵察「ゴーストタウンか?」
自衛「そうとは思えないぜ、家の中を見て見ろ。」
同僚「ちょっと!悪趣味だな…」
自衛「そんな場合か!見ろ、生活してた感がはっきりと残ってる」
同僚「確かに…それも数時間前まで人がいた感じ…」
偵察「俺達と入れ替わりにどっかに飛ばされてたりしてな」
隊員B「………」
衛生「…あー…」
同僚「…やめてよ、笑えない」
偵察「…悪い…」
自衛「そう言ってやるなよ、偵察は空気を和まそうと思…ッ!」
?「――(詠唱)――貫け!炎の矢!」
自衛「隠れろ!!!」
同僚「え?」
偵察「は?」
衛生「あ?」
隊員B「何が!?」
ボァァァァァァァァァ!!!
偵察「おわぁッ!」
隊員B「熱っつ!何だ!?」
同僚「炎が!いったい何だ!?」
自衛「あそこだ!二時の方向、民家の屋根の上!」
?「しまった、はずした!」
同僚「一体何?火炎瓶!?」
偵察「そんなレベルじゃなかったぞ!」
隊員B「焼夷ランチャーの類かもしれません!」
自衛「何でもいい!検証より先にやることがあるだろが!」ジャキッ
同僚「ちょ!何する気だ!」
自衛「決まってるだろ!何のために銃を持ってきたと思ってる!?」バッ
同僚「まて、相手の正体もわかってないんだぞ!?」
自衛「同僚、そういう考え方は死人を出すフラグだ!!!」
ボウボウボウ!!!
?「うわっ、痛っ!な、何だ!?」ダッ
自衛「逃げやがった!当たったとおもうが…」
同僚「なんてこと…」
自衛「考えるのは後だ!あいつは先に攻撃してきた、少なからず敵意があるぞ!
交戦準備!」
偵察「なんだってんだ、くそが!」
隊員B「あ!ま、前!前を!」
自衛「今度は何だ?」
??「僧侶ー!!しくじった分は今夜の飲み代で払ってもらうぞー!!」ダッ
衛生「何だアレ…?」
隊員B「甲冑と、斧?…っていうか、こっちに突っ込んできますよ!?」
自衛「撃て!あんなのでどたまかち割られたら、ただじゃすまんぞ!」ボウボウボウ
??「うわっち!?へへ、見たこと無い魔法だな…楽しめそうじゃん!」
同僚「何だ今の…人間の動きじゃないぞ!」
自衛「見たろ!常識は通用しそうにないぞ!撃つんだ!」
偵察「糞が!死んでも恨むなよォ!!!」ガチャ
バララララララララララララ!!!!!
??「おわっ!とっ!?やばっ!?」
偵察「当たらねぇ!ふざけてやがる!」
自衛「右側に撃ち続けろ!俺が狙う!」
??「だっ!うひーっ!なかなかスリリングだな!でも、あたらんよ!」
自衛「よし、左に飛べ…よしっ!」バスッ
??「!?ッ、痛った!?」ドザザッ
自衛「止めだ!
」
バッ!
自衛「!?、消えた!?」
同僚「陸自!左だ!」
自衛「…嘘だろ?」
隊員B「人間の跳躍力じゃない」
???「戦士、大丈夫か!?」
??「痛てて…へへ、あたしも借り作っちまった…」
衛生「逃げる!」
自衛「逃がすかよ!」ジャッ
同僚「自衛!お前の真上だ!」
自衛「は?」
????「はあああああああああ!!」ヒュゥゥ
自衛「おぁぁぁぁ!?」ガシッ
ガキャッ!
????「ッ!鉈で受け止めるとは!」
自衛「ジープに積んどいてよかった…だらぁっ!!!」グオォッ
????「ッ!」(後ろに跳ぶ)
自衛「くそが!なんだあの冗談みたいな大剣は………おらぁぁぁ!」ダッ
同僚「ちょっと、自衛!」
偵察「刺突する気か?」
????「来るか!」
陸自「おぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
????「はぁぁ!」ブンッ
自衛「危なッ!」ヒュッ
衛生「避けた!」
偵察「心臓に悪い!」
自衛「だぁぁぁぁぁ!」(刺突)
????「ッ!」ヒュン
自衛「野郎!」ボウボウボウ
????「うわっ!?な、なんだこの奇怪な武器は!?」
自衛「[ピーーー]ぇぇ!!!」
????「くっ!」
ガッキィン!
????「く………!」ググ
自衛「………!」ググ
同僚「鍔迫り合いに…」
衛生「一歩違えば、真っ二つだったぞ…」
????「なかなかの腕だ…!ただのゴロツキではないようだな…!」ググ
自衛「ああ?誰がゴロツキだよ・・・!何様のつもりだ!」ググ
????「聞き分けがあるなら言っておく。
この村は貧しい、襲撃しても大した収穫はないぞ。」
自衛「意味わかんねぇ事ほざくな!襲い掛かってきたのはそっちだろうが!」ググ
????「・・・何?」
そうか規制かかっちゃうのか、忘れてた
ッバ
????「…君達は、賊の類ではないのか?この村に目をつけたのではないと?」チャッ
自衛「馬鹿いうな、仮にも自衛隊員がそんなことするわけねぇだろ!」ジャキ
????「じえいたい…?よくわからないが、その言葉に偽りはないか?」
自衛「そう言ってるだろ、面倒臭ぇ。」
????「………わかった、信じよう。」スッ
自衛「ああ?」
????「私の名は"君路の勇者"。魔王を討つべく仲間と共に旅をしている者だ。」
自衛「………はぁ?」
偵察「………あいつ、なんつった今?」
隊員B「たぶん、勇者って…」
君路の勇者「よければ君の名前を。」
自衛「え、あ、ああ…」
ビッ
自衛「…陸上自衛隊、北部方面隊、普通科連隊所属、自衛陸士長だ。」
君路の勇者「…えっと…すまないもう一度…」
自衛「いや…いいよ、一応言って見ただけだから。自衛でいい。」
君路の勇者「そうか、この度はすまなかった、てっきり盗賊団がこの村を
襲撃しにきたものかと思ってな…」
自衛「まあいいぜ、こっちに怪我人は出なかったんだ、
それよりそちらさんは…」
???「勇者!」バッ
自衛「うおっ!」
???「勇者無事か!」
君路の勇者「ああ、騎士。僕は無事だよ。」
聖腕の騎士「そうか、よかった。しかし…こいつらは…?」
君路の勇者「誤解だったんだ、彼らは賊じゃないし、この村を襲いに来たわけでもない。」
聖腕の騎士「信用できるのか?」
君路の勇者「ああ、どうやら彼らも規律ある組織の人間らしいしな。」
聖腕の勇者「そうか、勇者が言うなら信じよう」
君路の勇者「自衛、紹介しよう。僕の仲間の騎士だ。」
聖腕の騎士「聖腕の騎士だ、この度は無礼なことを。」
自衛「あ、いえ、こちらこそ…」
君路の勇者「それと…来たみたいだな。」
??「勇者ー!大丈夫かー!?」
?「戦士さん待ってください!まだ治療が!」
自衛「あ、さっきの」
??「あれ、一体どうなったんだ?」
君路の勇者「自衛、僕の仲間の戦士と僧侶だ。二人共、彼は自衛。
我々の誤解で、彼らはこの村を襲いに来たわけではないんだ。」
碧明の戦士「ありゃ〜、なんだそうだったのか〜。
そりゃ、悪いことしたな!」ビッ
導きの僧侶「なんてことだ、私はとんでもないことを…」
碧明の戦士「魔法をはずして正解だったな、僧侶!」
導きの僧侶「う、うるさいな!」
自衛「ははは…」
偵察「…おい、自衛。どうなってんのか説明してくれ…」
自衛「あ、ああ、どうやら彼らは敵ってわけじゃないらしい…、
俺等を賊と勘違いしたようだ…」
偵察「賊って…まぁ、見えなくもないが…特にお前の強面はな。」
自衛「喧嘩売ってんのか…」
衛生「"盗賊じゃぞ、孫一〜"ってか」
隊員B「"同族"だよ、それ…」
衛生「あれ、そうだっけ?」
同僚「…ともかく、こっちも名乗っておいたほうがよさそうだな…
普通科連隊所属、同僚陸士長です」
衛生「あ、同じく衛生一等陸士」
隊員B「隊員B一等陸士です」
偵察「特科連隊所属、偵察陸士長」
碧明の戦士「よろしくぅ!」
導きの僧侶「ほら戦士さん、治療の続きを…」
自衛「そうだ、さっきの戦闘でそっちの二人を負傷させちまったんだ、
衛生、彼らを見てやってくれるか?」
衛生「了解」
導きの僧侶「ああ、大丈夫です、もう治療は終わりますから。」
衛生「え?」
導きの僧侶「――(詠唱)――」ポゥ
衛生「!?」
同僚「これって…!?」
偵察「…傷が、塞がってく…?」
碧明の戦士「よし、治った!サンキュー僧侶!」
僧侶「あまり無茶しないで下さい」
自衛「お、おい、今のは…」
僧侶「初期の治癒魔法ですよ、私はまだ修行中の身なのでこの程度ですが。」
衛生「ま、魔法…?」
偵察「嘘だろ…」
同僚「なんなんだ、一体…」
聖腕の騎士「勇者、我々は村の人達に心配ないと伝えてくる。」
君路の勇者「ああ、頼むよ。村の人達は安全のために、
村の中央に避難してもらっているんだ。」
自衛「ああ…それで人の気配がなかったのか。」
君路の勇者「僕らもさっきこの村に辿り着いたばかりなんだが、村の人に
"奇妙な荷車に乗った妙な連中が、この村を狙っているようなので
助けて欲しい"と、頼まれてね。」
偵察「それ俺だな、さっきこの村に近づいたのを見られてたのか。
」
隊員B「斥候が裏目に出ましたかね…」
同僚「不可抗力だ、こんな事態が予測できると思うか?」
自衛「そうだな…村の代表者と話がしたい。よければ取り合ってもらえないか?」
君路の勇者「わかった、よければ僕らも同席させてもらっても?」
自衛「村の人の同意があれば、ぜひとも。そのほうがこちらとしてもありがたい。」
村の中心 村長の家
村長「この度は大変無礼なことをいたしまして、いやはや…」
自衛「気にしないで下さい、村を守るべき立場であれば、当然の判断です。」
村長「そう言っていただけるとありがたい。それで、失礼を重ねますが、
あなたがたはいったい…?」
自衛「あー、なんといいますか…"漂流者"とでもいいましょうか…」
村長「漂流…ですとな?」
自衛「的確な表現ではないのですが、正直我々も自分達の状況を
把握しかねていまして…」
村長「そうですか…」
同僚「とにかく、我々はあなた方に危害を加えるつもりはまったくありません。
それだけは心配しないで下さい。」
自衛「それと、申し訳ないのですが、よければ地図を貸してもらえませんか?」
村人「地図ですか?」
自衛「はい、この近辺の地理がわかる物と、世界地図を。」
村人「申し訳ない、近隣の物はありますが、世界地図のような物はこの村には…」
自衛「そうですか…」
君路の勇者「いや、世界地図なら僕らが持ってる。よければそれを。」
自衛「本当か、それはありがたい。」
村長「では近隣の地図を用意させましょう、しばしお待ちを。」
自衛「お願いします。」
君路の勇者「えっと、あったこれだ」
自衛「ありがとう………ッ!?こいつは…」
同僚「やっぱりか………」
自衛「俺等の世界地図とまったく違う!日本も、アメリカもユーラシア大陸もない!」
同僚「聞いたことも無い国や地名ばっかり…、ここは一体どこになるの?」
君路の勇者「ここは"五森の公国"の領土の一番西端の所だな」
自衛「おいおい…」
同僚「大陸がいくつかあるけど、どれも見たことも聞いた事も…、
?なぁ、この地図、端が全部海になってるけど…」
自衛「言われて見れば…おい、この先を示した地図ってないのか?」
君路の勇者「…?何を言っているんだい?」
自衛「は?」
君路の勇者「海の端は世界の終わりになっているに決まってるじゃないか。」
自衛「天動説かよ!」
村の空き地
自衛「はい、ここが現在地、これが北海道に見える人。」
偵察「………」
衛生「………」
隊員B「………」
同僚「…よせよ」
自衛「…悪ぃ」
偵察「…つまり、俺達は地球じゃないどこぞにいるってことか?」
隊員B「薄々そんな気はしてましたけど…」
自衛「…他にも色々と聞き出せたが、詳しくは本隊に戻ってからにしよう。」
同僚「そうだな…ん?」
村人「た、大変だー!」
偵察「なんだ?」
君路の勇者「どうしました?」
村人「ああ、ゆ、勇者様!」
君路の勇者「落ち着いて、何があったんです?」
村人「か、怪物です!北の空から怪物が空を飛んで、こ、こっちに向ってきます!」
路の勇者「なんですって!?」
バラバラバラバラ…
偵察「ん、おいこの音…」
衛生「まさか…」
バラバラバラバラ!
村人「で、出た!怪物だ!」
同僚「やっぱり!」
自衛「ありゃ空自のCH-47Jだぜ!」
聖腕の騎士「な、なんだあれは!?」
碧明の戦士「うひゃー、なんかとんでもないのが出たな!」
君路の勇者「あんなモンスター見たこと無いぞ…皆、戦闘の用意を…」
自衛「待て!あれは俺達の同胞だ!」
君路の勇者「な、何?あの怪物が?」
自衛「ああ、心配ない、だから攻撃しないでくれ!
隊員B、ジープを出せ!ヘリを村の外に誘導する!」
隊員B「了解!」
ブォォォォォォォォ!
自衛「車輪で円を書いて着陸ポイントを示してやれ!」
隊員B「わかりました!」
自衛「終わったら退避しろ、機首に出ると真っ二つにされるから気をつけろ!」
バラララララ!
君路の勇者「うぉ…ものすごい音だ…」
導きの僧侶「翼の羽ばたきで風が…」
衛生(翼じゃなくてブレードなんだが…まあ、いっしょか…)
キュィーーーーン、ヒュンヒュンヒュン………
二尉「よっと…助かった。航空自衛隊、入間基地所属の二尉です。」
自衛「北部方面隊、普通科連隊の自衛陸士長です。」
二尉「どうなることかと思ったよ、飛行中突然光に覆われて、
気付いたら見知らぬ世界が広がってたんだ…一体何が…」
自衛「我々も似たような状況です…自分達は本隊から偵察に出て、
先程この村と接触したばかりなんです。」
二尉「そうか、ともかく君達と会えただけでもほっとしたよ…」
自衛「それはよかった、詳しい話はあとにしましょう、本隊に案内します。」
二尉「助かるよ。」
自衛「そういうわけで、我々は一度仲間の所へ戻ることにします。」
村長「そうですか、なんのお役にも立てず、申し訳ない…」
同僚「いえ、こちらこそ騒ぎを起こしてばかりで申し訳ありませんでした。」
君路の勇者「自衛、僕らも準備が整い次第、この村を発つことになった。」
自衛「そうか、いろいろ迷惑掛けたな、話してない事もまだたくさんあるが…」
君路の勇者「仕方が無いさ、もしまた会う機会があったらその時はゆっくり話そう。」
自衛「そうだな、じゃあまたの機会に!」
ブロロロロロロロ…
自衛「クレスト21、こちらが確認できますか?まもなく本隊に合流します。」
二尉『こちら21、問題ない。』
自衛「了解、丘が視認できたら、むこうから誘導がありますのでそれに従って下さい。」
偵察「…なーんか、まだ実感沸かねーなー」
自衛「みんな同じだろ、そんなすぐに受け入れられるかよ…」
衛生「…士長、どうしたんです。妙な顔で地図を睨みつけて…」
同僚「妙な顔は余計だ…なぁ、これなんて読む?」
自衛「ああ、さっきも見ただろ。"五森の公国"とかいう聞いた事も無い国名だ。」
隊員B「それがなにか?」
同僚「これ文字さ、どう見ても日本語じゃないのに私達どうして読めるんだ…?」
自衛「!!!」
衛生「あ…そういえば…」
自衛「貸してみろ!」バッ
自衛「………なんだこれ、日本語でもねぇ、英語でもキリル文字でもねぇ……、
それなのに…なんで、分かるぞ…なんて読むのか…」
同僚「どういうことだ…」
衛生「くそ!頭がおかしくなりそうだ!」
自衛「…やめだ、考えるのはよそう…」
夜
自衛隊は丘の上に陣地を構築
陣地内のテントにて会議中
一曹「本当だ…地名は聞いた事も無いが、確かに読めるな。」
自衛「それに先程話したように、自分たちは魔法のような物を目撃しました。」
同僚「さらには、交戦した彼らは勇者一行と名乗り、
魔王討伐のために旅をしているとか……」
二尉「普通だったら、こんな話をしたら病院送りだな。」
一曹「しかし、現状我々はそれを否定しきれない状況にある……」
偵察「まるでゲームの世界に放り込まれた気分だ…」
衛生「この先どうすりゃいいんだよ!」
一曹「落ち着かんか、わからないことを考えても仕方が無い。
それより、できることを考えよう。
まずは、現状確認しようか。」
特科「我々特科隊は丘の上に陣地を張って、対抗部隊の連中を監視することになってたんだ。」
自衛「そして俺達がその護衛についてたわけだ。」
補給「私達の部隊は演習に参加している部隊への補給、整備を担当していました。」
二尉「俺の機体は三沢まで、整備隊と整備機材を運んでいる最中だった。」
同僚「そして、全員がこの別世界に飛ばされてきた…」
一曹「それ以外の部隊は確認できず、どの無線も通じず、衛星からの応答も無しと。」
二尉「………ははは、終わっちまったな。」
隊員A「二尉!」
二尉「すまん、つい…」
一曹「仕方がありません、確かに情報が少なすぎる…」
隊員A「こうなると一番の問題はやはり食料です、糧食にも限りがあります。」
一曹「自衛、あの集落からの補給は望めそうか?」
自衛「それは無理だと思います、あの村は小さすぎる。」
同僚「例の勇者から聞いた話しによると、ここから東北東の方向に比較的大きな街が
あるそうです。」
一曹「距離はどのくらいだ?」
同僚「彼らは歩いて三日といっていました。超人的な能力を持つ彼らも、
歩く速度は変わらないようだったので、
ジープを飛ばせば二時間もかからないでしょう。」
一曹「よし、その街で物資の補給と情報収集を行う。
自衛、よければ実績のあるお前達に任せたいが、いいか?」
自衛「いいでしょう、何もわからないまま籠もってるよりはいい。」
同僚「自衛に同意します。」
一曹「ジープと装備は用意しておくが、なにか必要なものがあれば言うように。
では、本日は解散。夜間警備の者は十分に警戒するように!」
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